Q:検診で《便潜血が陽性、精密検査をうけるように》と送られてきました。これってどういうこと?
A:この便潜血検査の目的は、大腸がんやこれに関与するポリープの早期発見により、大腸がんの死亡率を減少させようということです。胃潰瘍などの上部消化管からの出血は、よほど多くない限り反映されないと考えています。
当院の便潜血検査(FOBT;fecal occult blood test)についての考え方をご説明します。残念ながら当院独自での統計学的エビデンス(証拠)は提示できる段階にありません。論文や書籍で報告されている根拠を信じて患者さんに説明していますが、全員に無理に精密検査を強要するわけではありません。自分の健康はやはり自分で守るべきものです。私たちは喜んで協力します。
Q:FOBT陽性といわれました。もう一回FOBTを再検査して陰性となったら精密検査は不要ですか?
A:いいえ。検査の感度が70〜85%であり、せっかく拾い上げた癌の15%以上が偽陰性としてはずされてしまう危険があります。2日法でひっかかったら、その時点で精密検査を受けるかどうか決めてください。
Q:精密検査ってなんですか?
A:注腸造影検査(BE;Barium Enema)と大腸ファイバー(TCS;Total colonoscopy)があります。外来で行う肛門診や直腸鏡だけでは精密検査をうけたとはいえません。
Q:注腸造影検査(BE)と大腸ファイバー(TCS)はどちらでもいいのですか?
A:はい、選択してください。日本中の施設間の検査精度に差がありつつもTCSがBEに優れているという考えには賛成するので、できればTCSをお勧めします。しかし残念ながら当院でも全員を15分以内で終了することは約束できず、検査に伴う不快感も患者さん次第で異なります。またBEでもし質的診断を要するポリープがあると診断されたときはあらためてCSをお勧めすることになります。別記の長所、短所をよくお考えのうえ、現時点ではどちらを最初に選択していただいてもよいと考えています。
注腸造影検査
肛門から軟らかい管を入れて、バリウムという造影剤と空気を注入し、大腸全体のレントゲン写真を分割して撮影していきます。台の上で横向きになったり、うつ伏せになったり体位変換に協力していただきます。
長所と短所;検査完遂率はほぼ100%ですが、便のかすが残っているとポリープと判別ができないことがあります。
前処置;便残渣の少ない特別な食事を前日の朝から夕まで食べていただきます。午後8時と9時半に、下剤を服用していただきます。翌日早朝に便残渣が排出され、きれいになった午前中に検査を行います。検査自体は約10〜20分です。
検査後;バリウム(白い)とガスが出てきます。午後は軽作業は可能ですが、過度の肉体的労作業は控えるべきです。高齢のかたで、肛門括約筋に自身のない方は、紙パットやおむつの用意をお願いします。
大腸ファイバー
肛門から内視鏡を入れて、曲がりくねった大腸をなるべくまっすぐに折りたたみながら奥まで挿入し、抜くときに空気で膨らませながら観察してきます。
長所と短所;腸の個性により、簡単な方もいれば困難な方もいます。大腸の内腔はひだがあり、これに隠れた病変を見逃さないように水で洗ったり、色素を撒いたりしながら観察します。病理組織検査が必要と判断した病変は生検をとることができます。場合によっては、画面を見ていただき、治療的診断としてEMR(内視鏡的粘膜切除)を行うこともできます。こういった処置の場合には、出血や穿孔などの危険があることを承知していただければ行うことはできませんので、内視鏡施行医と画面をみながら相談していただくことになります。鎮静剤の使用はご希望ならば行いますが、この相談ができなくなるためあらためて後日処置内視鏡なります。
前処置;検査前日はとくに制限はありませんが、食べすぎると下剤後の排便がつらいと思うのでほどほどに。小さな種のある食べ物はご遠慮ください。午後9時ごろに下剤を服用します。朝指定された時間から一回に200mlぐらいずつ、2000mlの下剤を2時間かけて飲んでいただきます。自宅で飲んでいただききれいになったころに来院する方と、病院で飲んでいただく方とありますので看護師とご相談ください。検査は左下で横向きになって始めます。必要に応じて仰向けになったり、腹部を軽く圧迫することもあります。検査中におならがしたくなったら我慢しないで出してください。
検査後;検査後もガスによる腹満感がありますが、時間とともに軽快します。やはり軽作業ぐらいがいいと考えます。シャワーもありますので、肛門周囲についたジェルをきれいにしてからお帰りください。組織検査をした場合は約1週間で結果がでますので、お帰りになるときに次回の外来予約をお願いします。
欧米の考え方
50歳になったら1年に一度の便潜血検査とその他に5年ごとのS状結腸までの内視鏡(SCS)、10年に一度の全結腸内視鏡検査(TCS)を勧めています。ただし、考え方の基本は費用効果比が高いということで、患者さん個人の健康を保証していくという考え方ではありません。
大腸がん検診全国成績
約490万人がFOBT2日法を受け、要精密検査といわれたのが7.3%でした。その7.3%のうち、検査としてTCSやBE、あるいはBE+SCSを実際に受けたのが60%で、結果として7200個の大腸がんが発見されました。これは全体の0.15%となりました。(平成9年)
便潜血反応の検診は大腸癌死亡を減少させているのですか?
答え;はい。1年ごとのFOBTは33%の、2年ごとのFOBTは15〜21%の割合で大腸癌死亡率を減少させるといわれています。検査自体は拾いあげを目的としているのであって、要精密検査となった人が実際にどれくらいTCSを受けるかがさらに重要な要素となります。
TCSでポリープを切除したが、病理結果が腺腫、あるいは早期癌といわれました。つぎの検査はどうしたらいいの?
残念ながら、確信をもってお答えする根拠はありません。同じ部位ではなく、大腸粘膜にその遺伝的素地があるらしいということはわかっていますが、当院では遺伝子学的検査は行っていません。一年後にTCSを行うことをお勧めし、その後のTCSの期間は1年から4年というあいまいな状態にあります。ただし、2親等以内の家族に45歳以下で消化器癌を発症した方がいらっしゃる場合は1年ごとがよいと考えています。
参考図書)EBMからみた大腸がん検診 大谷 透 編 金原出版
大腸ポリペクトミーはどこまで必要か 中村孝司 多田正大 工藤進英 日本メディカルセンター
消化器外科のエビデンス 安達洋祐 医学書院
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